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第一回研究会レポート

研究会ポスター

7月2日(土)午後、猛暑にもかかわらず約60名ものご参加を得て、beyondの第一回公開研究会をJAXA東京事務所で開催しました。にわかモデレーターを務めた内冨beyond事務局/JAXA国際部)より、概要を報告します。

第一回のテーマは、beyondメンバーで話し合い、宇宙芸術の最先端ともいえる「ISS宇宙芸術実験」としました。宇宙をモチーフとしたアートは古今東西、様々なものがありますが、JAXAではISS実験が芸術との接点のはじまり(原点)です。

日本は、ISS(国際宇宙ステーション)に実験棟「きぼう」を提供して貢献しています。「きぼう」を利用する研究テーマとして、JAXAでは1995年頃から宇宙芸術を含む人文社会科学系の研究も新たな対象とすることにしました。世界の宇宙機関の中では大変ユニークな取組みです。

私は2000年頃から「きぼう」の多様な利用促進を担当し、主にビジネスの促進に力を入れていました。しかし、逢坂先生や石黒先生の宇宙芸術プロジェクトを担当したり、米林先生などのお話を聞く機会があり、先生方の斬新な発想や熱意に感銘を受けました(そのようなご縁の連鎖がbeyond設立につながりました)。

 

パネリストさて、土曜の研究会には、関東在住のISS宇宙実験の経験&計画中の先生方(逢坂先生、米林先生、石黒先生、河口先生、安藤先生)がほとんど参加という大変豪華な顔ぶれでした(beyondは昨年始まった有志活動=謝金・交通費をお支払いする体力がまだありません・・・先生方、本当にありがとうございます!)。京都からは、京都大学宇宙総合研究ユニットの磯部先生他がTV会議で参加してくださいました。

冒頭、beyond代表の逢坂先生から、「東日本大震災を受けて今こそ芸術の意義を改めて考えなければいけない」との決意表明。米林先生からも石巻の小学校での宇宙粘土を使った人形作りについて紹介がありました。

昨年10月のbeyond立上げWSでは過去の宇宙実験を紹介したので、今回は計画中の河口先生、安藤先生、逢坂先生(2回目)のプロジェクト紹介から始めました。そしていきなり、河口先生の世界観やユニークな発想に圧倒されました。

宇宙芸術実験のプレゼンテーション

種子島出身の河口先生には、海と宇宙は同等の大切なモチーフ。自ら宇宙に行くことを前提に、リスクを減らし楽しく行くための様々なシミュレーションをしているとのこと。圧倒的な発想力と創造力。特にくらげロボットは、モデレータでありながら涙を流して笑い転げてしまいました。

次は油絵出身の安藤先生の、水を通して宇宙から地球を見る繊細な作品(「お地球見」)。技術的にはまだ課題が多いとのことですが、たくさんの小さな地球が目の前に広がる様子は美しく、地球から離れて宇宙を漂う宇宙飛行士には感動もひとしおでしょう。安藤先生が宇宙芸術に取り組む出発点は「好奇心」であり、できれば自分が宇宙に行って、無重力の不自由さを感じながら油絵を描いてみたいというご発言もありました。

最後に逢坂先生から、バージョンアップしたスパイラルトップの紹介。逢坂先生は宇宙と人間(DNA)をつなぐキーワードとしてスパイラル形状にこだわり、宇宙空間での美しいライトアートを実践しています。逢坂先生はイタリアでの1940年代の未来派に影響を受けていて、光や時間を無重力下で表現したいとのことでした。

続いて宇宙実験経験者の米林先生、石黒先生、逢坂先生からのコメント。宇宙空間で「手びねりでのひとがた」実験を実施した米林先生は、「宇宙に向かう視点より、触れられるほど身近に引き寄せる視点を大切にしている」とのこと。宇宙舞踊の石黒先生は、「宇宙芸術を実践している間は宗教的なものすら感じた」というスピリチュアルなコメント。逢坂先生は、「外から地球を見る視点(閉鎖系から解放系へという感覚)を大切にしている、生命の象徴である 『水』を意識している」とのこと(確かに、計画中の3人の先生はいずれも水をキーワードにしていました)。

さて、ここでモデレータは途方に暮れました。各先生の発想や向かう先がそれぞれに個性的で、一つの方向性にまとめることはおよそ不可能です。そこで、「キレイにまとめる」ことを放棄し、会場との意見交換に移りました。

会場からは、「人類の遺伝子の中にすでに宇宙があるので、宇宙芸術と地上芸術はシームレスにつながっている」とのご意見がありました。確かに河口先生の作品はパラメーターの問題ですし、安藤先生も地上の活動の延長線上でとらえている。宇宙芸術を特殊なものとして考える必要はなさそうです(技術的には様々な制約がありますが・・・)。

 

磯部洋明先生

その他にも、ご自身がやっている芸術活動とbeyond活動でコラボしたいという嬉しい声や、殺風景なISSでは癒しが必要で宇宙で華道をするとどうなるかなどの御提案がありました(時間の関係で質疑応答が少なくて残念・・・すみませんでした)。

京大宇宙ユニットの磯部先生からは、「宇宙から地球を見る視点が冷戦を終わらせた(立花隆氏)「地球と異なり宇宙では太陽は無機質で、敵対する存在にすら見えた(宇宙飛行士の山崎直子氏)」の言葉を引用し、これまでよく聞く「コスモポリタン的な視点」を超える、新たな創造を期待するとの発言がありました。beyond活動紹介

最後に宇宙芸術写真・論文集や種子島宇宙芸術島構想などのbeyond活動の紹介と参加呼びかけをさせていただき、研究会は30分を超過してお開きに。モデレータの感想としては、(これまでも感じていましたが)芸術家と研究者(サイエンティスト)や宇宙開発関係者の根っこは同じ=好奇心だなあと。だからこそ、公的な活動としてやる以上はクオリティの高い成果が求められますね。

その後の懇親会は多くの参加を得て大変な盛り上がり。勝井三雄先生も駆け付けて下さり、beyondのロゴデザイン案を御披露頂きました。4つの案に懇親会参加者が投票し、満場一致で素敵なロゴが決まりました(勝井先生は、なんと、有志としてbeyondロゴをデザインしてくださいました。本当に、ありがとうございました!)。

 

 

勝井先生ロゴデザイン発表

研究会は少人数のbeyond事務局メンバーによる手作り&走り回っての運営で、不手際があったかと思います(すみません)。特に休日のためビル入口が閉鎖されており、貼り紙をして&研究会開始までは人を立てていたのですが、分かりづらかったとの声が複数ありました。次回は改善したいと思います。

アンケートには、beyondに参加したいとの嬉しい声がたくさん寄せられていました(ありがとうございます!)。次回の公開研究会は秋~冬に実施予定です(テーマは未定)。それまでに議論を深めるため、宇宙芸術実践者&事務局で非公開の小規模研究会を何度か行う予定です。アンケートで宇宙芸術実践者や事務局に手を挙げてくださった方には、個別に連絡をさせていただくと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。